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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

三

院長の墓の前に供えられる花が、幾度か枯れ、幾度か代って、萩、桔梗、女郎花から白菊と黄菊に秋を進んで来た一カ月余の後、余はまたその一カ月余の間に盛返し得るほどの血潮を皮下に盛得て、再び院長の建てたこの胃腸病院に帰って来た。そうしてその間いまだかつて院長の死んだと云う事を知らなかった。帰る明る朝妻が来て実はこれこれでと話をするまで、院長は余の病気の経過を東京にいて承知しているものと信じていた。そうして回復の上病院を出たら礼にでも行こうと思っていた。もし病院で会えたら篤く謝意でも述べようと思っていた。

逝く人に留まる人に来る雁

考えると余が無事に東京まで帰れたのは天幸である。こうなるのが当り前のように思うのは、いまだに生きているからの悪度胸に過ぎない。生き延びた自分だけを頭に置かずに、命の綱を踏み外した人の有様も思い浮べて、幸福な自分と照らし合せて見ないと、わがありがたさも分らない、人の気の毒さも分らない。

ただ一羽来る夜ありけり月の雁

三

ジェームス教授の訃に接したのは長与院長の死を耳にした明日の朝である。新着の外国雑誌を手にして、五六頁繰って行くうちに、ふと教授の名前が眼にとまったので、また新らしい著書でも公けにしたのか知らんと思いながら読んで見ると、意外にもそれが永眠の報道であった。