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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

十七

せっかく行っても、行き着いて見たら、遅過ぎて間に合わなかったと云うような事があってはつまらないと語り合って来た。――これも回復期に向いた頃、病牀の徒然に看護婦と世間話をしたついでに、彼等の口からじかに聞いたたよりである。

かくすべての人に十の九まで見放された真中に、何事も知らぬ余は、曠野に捨てられた赤子のごとく、ぽかんとしていた。苦痛なき生は余に向って何らの煩悶をも与えなかった。余は寝ながらただ苦痛なく生きておるという一事実を認めるだけであった。そうしてこの事実が、はからざる病のために、周囲の人の丁重な保護を受けて、健康な時に比べると、一歩浮世の風の当り悪い安全な地に移って来たように感じた。実際余と余の妻とは、生存競争の辛い空気が、直に通わない山の底に住んでいたのである。

露けさの里にて静なる病

十七

臆病者の特権として、余はかねてより妖怪に逢う資格があると思っていた。余の血の中には先祖の迷信が今でも多量に流れている。文明の肉が社会の鋭どき鞭の下に萎縮するとき、余は常に幽霊を信じた。けれども虎烈剌を畏れて虎烈剌に罹らぬ人のごとく、神に祈って神に棄てられた子のごとく、余は今日までこれと云う不思議な現象に遭遇する機会もなく過ぎた。