轻松读懂日语经典作品
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おもいだすことなど
思い出す事など
经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页
一年ならずして余は松山に行った。それからまた熊本に移った。熊本からまた倫敦に向った。和尚の云った通り西へ西へと赴いたのである。余の母は余の十三四の時に死んだ。その時は同じ東京におりながら、つい臨終の席には侍らなかった。父の死んだ電報を東京から受け取ったのは、熊本にいる頃の事であった。これで見ると、親の死目に逢えないと云った和尚の言葉もどうかこうか的中している。ただ顋の髯に至ってはその時から今日に至るまで、寧日なく剃り続けに剃っているから、地面と居宅がはたして髯と共にわが手に入るかどうかいまだに判然せずにいた。
ところが修善寺で病気をして寝つくや否や、頬がざらざらし始めた。それが五六日すると一本一本に撮めるようになった。またしばらくすると、頬から顋が隙間なく隠れるようになった。和尚の助言は十七八年ぶりで始めて役に立ちそうな気色に髯は延びて来た。妻はいっそ御生やしなすったら好いでしょうと云った。余も半分その気になって、しきりにその辺を撫で廻していた。ところが幾日となく洗いも櫛ずりもしない髪が、膏と垢で余の頭を埋め尽くそうとする汚苦しさに堪えられなくなって、ある日床屋を呼んで、不充分ながら寝たまま頭に手を入れて顔に髪剃を当てた。