轻松读懂日语经典作品
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じょうき
情鬼
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,393 字 · 35 页
その月の光を上半身に浴びてしどけなく座っている女の姿があった。少し離れた処にモーニングを着た男がこっちを向いていかにも行儀よく、俯向き加減になって、深々と安楽椅子に腰かけていた。私は息も吐かずに延び上って見ていた。やがて女は膝頭でいざり始めた。まるで蛇のような曲線美を描きながら、男の傍にすりよってズボンの膝に両手を置いた。その片方の手には何か小さいほの白い棒のようなものを持っていた。女は最初しきりに何か掻きくどいていたが、男がてんで相手にもしないので、しまいには男の膝に顔を伏せてしくしく泣き出した。泣きながらこんどはその小さいほの白い棒に頬ずりしたり、唇をつけたり、はてはぴしゃぴしゃとしゃぶり出した。しかし相手は一向無表情で身動き一つしない、同じ姿勢を崩さずにちゃんとしているのだ。
その時、女は何気なくふと私達の立っている窓の方へ振り向いた。細面の鼻の高い、素晴らしい美人だ、その顔が誰やらに似ている。誰だったか知ら? 誰だろう、と思った瞬間ふっと思い出した。宮本夫人! ああそうだ、宮本夫人だ、確実にそうだ。と思うと同時にこんどは男の顔も思い出せた。