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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

とまれ、姉の道子が間もなく死歿してから、若い信夫にはいままで平気で見過した季節の風物が、そのままの形では見られなくなったことも事実だ。

信夫の詩に父をうたい、父を見詰めた作品が多い。父を見ること、父をうたうことは小説家の場合は、大ていその作家の出世作か処女作になっている。まず何かを書こうとするときには父親のことが、もっとも書きよいから書きはじめるのである。人間は先ず成長の途上にあっては何人よりも、父という或る意味の恐ろしい発言者をみとめ、その父に対しては生涯頭が上らないものだ、父親という者は先ず我々を創造してくれた、世界にたった一人しかない偉い人間なのである。ほかの誰人も我々を作り出してくれたわけではない、我々は少々馬鹿であっても父とか母とかは、敬わなければならないものだ、総ての人間の敬うということの始まりがここに存在するのだ。まして並外れた偉い父とか母とかを持った人間は、その父とか母とかの外側に飛び出すことが出来ない、世界のいかなる人間の群からでも飛び越えられても、父母の山は超えられないのである。この美しい誓いは世界が滅びて行っても、このものは不滅なのである。