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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
※(始め二重山括弧、1-1-52)酔の廻つてゐるとき、老師はあまり人の言葉を耳に入れないやうな振りを見せた。しかし、何か大切なことだけは、酔眼の奥にくわつと見開いたものがあつて、しつかりつかんで置く、さういふ風な性質であつた。「君は頓馬な男だ、いつぞや私が書いて上げた短冊を忘れて行つたらう」と、立ち上ると、違ひ棚から新聞紙に包んだものを持つて来た……(後略)※(終わり二重山括弧、1-1-53)
父を愛し母を愛し姉を愛し兄を愛した彼は、昌子を貰うために飽くまで父と戦い母と戦い兄とも戦い、兄秀夫を先ず味方に惹きいれ、ついに父母の城をおとしいれた、その間にあって一つも自棄くさいことはしないで、真情の動かないところで押して押し抜いたのである。ある日、父秀松博士は私の家に大きいオーヴァを着用に及んで、あれには困ったものですが、何とか媒妁の労を取って下さいと言いに見えられ、私はついにこの城を陥しいれた彼のまごころに、ひそかに舌を捲いたくらいである。では何分よろしくと言って、秀松博士はまた大なる茶色の外套を着て、心足りたふうで帰って行かれた。私は信夫にいったものだ、大きいオーヴァを着てお父さんが見えたぞ、しかし万端承諾されていると嬉しそうな彼の顔を見て、私もはればれしく彼のために喜んだ。