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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
濁った情熱とか変な頭とか、トンチンカンな物言いとかの必要である小説の世界では、百田はあまりにあっさりした意匠の男であったため、ついに私の喜ぶ一篇をえらぶことが出来なかった。小説をかく男という者は普通の人間とはちっとも変っていないけれど、小説というものを書いた後の作品では、その人間性というものの変り方を強度に感じることが出来るものだ。「彼女の甦り」の題材を詩の上で取り組むことは出来るが、これを物語の上で現わしていくためには数百枚を要するし、小説の困難な砂漠や山嶽が縦横に入り乱れていることを知らねばならぬ。広さの上では殆ど問題にならない広さがあるのだ。彼が彼女の甦りを詩で敷衍したことの謙遜は、やむをえない謙遜であったのであろう。私は小説を書くという人をいつも怖れていた。どんなちんぴらでも、小説くらいは書けるからである。だから、友達が小説を書くということでは、その書いている噂の最中を怖れていた。そこには私というぐうたら人間でさえ書いている小説が存在しているから、私よりりこうな人間の書く小説は、なかなか煙たい物であった。だが、それをちらとでも読んだ時には、怖れはただちに消散するのだ。