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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
私は率直に白秋の子供の時分の話を聞きたいといったが、家子さんは八歳ちがいの兄だったが、帰郷して俥から下りた兄をお友達とテニスをしていて、それを打っちゃって迎えに出たおぼえがある。しかし鉄雄さんが生きていらしったら、もっと面白い話があるでしょうが、それほど今急に思い出すこともないといわれた。聞き出すことは知っていても、ぬけぬけとはいわれず、私は万年筆で二行ばかり書いて、万年筆を袂にしまい込んだ。私の家に筆記をしに来た人はいままでたくさんいたが、みなノートに三、四枚は速記して行ったようである。だのにおれはたった二行しかまだ書いていない、これは怠慢だ、こんなことで若し雑誌社に勤めなければならなくなったら、編集長から小酷く叱られるぞと反省してみたが、腕時計はもう今日はと言って挨拶してから二十分間過ぎていた。家子さんは血圧が二百くらいあるし、心臓もわるかった。それだのに面白くもない皺苦茶面の私が坐りこんでいては、血圧に影響すると思い、何にも聞かないでおわかれしたのである。
表に出た私をやはり表の道路まで見送られた家子さんに対い、きまり悪げに帽子をひねくりながら言った。