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そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
四
「それじゃ辰之助さんに電話をかけましょうか」お絹自身はあまり悦びもしなかったが、行きたくなくもないふうで、そう言って電話をかけたが、辰之助は少し忙しいので、あまり進まないらしかった。道太も女連ばかりで行くのはいくらか気が差した。
いつの間にか電話をかけたとみえて、昨夜酒のあとで、辰之助が言いだした夏の季節の鯨餅という菓子が取り寄せられて、道太の前へ現われた。寒晒の粉のつぶつぶした、皮鯨に似た菓子である。夏来たことがめったにないので、道太には珍らしかった。
「おいしいかどうだか、食べてごらんなさい」
「これあうまい。いろんな菓子があるんだね」道太は一つ摘みながら言った。
それからむだ話をしているうちに、じきに夕刻になった。道太は辰之助が来てから何か食べに行こうと思って待っていると、やがて彼はやってきた。そして三人そろって外へ出た。おひろだけはお化粧中だったので、少し遅れてきた。
四
道太はすっかり御輿をすえてしまった。離れの二階は陰気だったけれど、奥の方の四畳半の窓の下へ机をすえれば、裏の家の羽目に鼻が閊そうであったけれど、けっこう仕事はできそうであった。