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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

一

一

「だんだんお強くなるばかりね」

「そう思うだけさ」

「初めのころはいつも二本でしたわ」

「嫌われたくなかったんだろう」

「うまいこと仰しゃって」河本佳奈は上眼づかいに彼をにらんだ、「それならいまは嫌われてもいいんですか」

「それほどの自信もないね」と云って中所直衛は佳奈の膳を指さした、「肴がさめてしまうよ」

「お給仕をしたり喰べたり、そんなきような芸はできません、お酒が済んだらごいっしょにいただきます」

「だんだん昔の生地が出るな」

「なにがですか」

「磯村へいってからはおしとやかになっていたじゃないか、眉を剃った顔をいつもうつ向けにして、俯し眼づかいで、立ち居もおっとりとしなやかで、大助になにか云うにもあまったるい、蚊の鳴くような声をだしていたのにな」

「もの覚えのおよろしいこと」

「あのおてんばな佳奈が、人の女房になるとこんなにも変るものかと」

「思いもしないくせに」佳奈はまたにらんで云った、「わたくしが磯村へとついでから、あなたがいらっしたのはたった三度よ、それも一度は磯村の葬礼のときでしょ、わたくしがあまったるい声をだしたかどうか、そんなことがあなたにわかるものですか」