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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

七

喜四郎はなにか云おうとしたが、すぐに思い止まって、直衛の言葉が理解できないかのように小首をかしげた。

「そのほうが商人であり、この城下で家中の諸屋敷へ出入りしているからには、表高と実収との差ぐらい知らぬ筈はない」直衛の口ぶりはまだ穏やかさを変えなかった、「したがって、矢堂玄蕃に百八十両という多額な借財を返済するちからのないことも、わかっていた筈だ」

「仰せではございますが、帳簿もごらんにいれ証文もごらんにいれました、いまさらご不審とは心得がとうございます」

喜四郎の顔には不敵な表情があらわれ、その声にも頑として動じない力があった。

七

「心得がたいと申すならたずねるが」直衛は一語一語ゆっくりと云った、「返済するちからのない者に多額の金品を貸す以上、なにかこれぞという目安があったであろう、いったいなにを目安に貸したのか」

「目安とはいかなることでございましょうか」

「繰り返して聞かそう、商人は資金を動かし、その利によって生活をするものだ、これならば利益があるという目安がついてこそ、金品を貸しもするであろう、返済する能力のない矢堂にこれほど多額の金品を貸したのは、なにを目安にしたのかとたずねるのだ」