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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

四

と直衛は云った、「じらさずに云ってくれ、幾らだ」

「わたくしは存じません」佳奈はそっぽを向いた、「そういうことは親がしてくれるものでしょう、わたくしには親がありませんから、どうぞ兄にでもきいて下さいまし」

「河本には云えないんだ」

「お話というのはそのことでしたの」

「河本が祝言の日どりをききに来た、そのことも相談したいが、差当っては持参金のことが知りたいんだ」

「わたくしそんな物を持ってゆかなければならないような弱みはございません、ほかにお話がないのならこれで失礼いたします」

直衛に止めようとする隙も与えず、佳奈はすばやく立って出ていった。

「昔の性分がそっくり出てきたな」直衛はにやっと微笑し、手を叩きながら呟いた、「――相変らず怒った顔はきれいだ」

女中が来て「お呼びですか」と云った。

「万平を呼んでくれ」と直衛が云った、「あるじの万平だ」

四

それから三日のあいだ、直衛は町奉行所へかよい、宗兵衛と共に要屋の訴状をしらべた。それには三年前からの売掛け代銀や、時貸しの金額が、月日順に詳しく記してあり、最後に「返済してくれと再三ならず督促したところ、刀を抜いて威し、店へ来てまで暴れる始末だから、やむを得ず御定法に縋って訴え出た」