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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
――宗兵衛が要屋のことで相談に来たとき、直衛もそれをみつけ、亡くなった妻の初尾が、塩漬けにするといい箸休めになる、と云ったことを思いだしたものであった。
「塩漬けにするということは聞いたが」と云いかけて直衛は佳奈の顔を訝しげに見まもった、「――おどろいたな、留守に来てそんなことをしていたのか」
「ですから珍しくはないんですのよ」
「家の者はなにも云わなかったぞ」
「畠中さんの躾がよろしいからでしょ、わたくしは口止めなんかいたしませんでしたわ」
「だろうと思うよ」と云って直衛は木瓜の実を指さした、「お手並は拝見したから、酒にしてもらってもいいだろうね」
「そんなにあがりたいんですか」
「一と月も飲まないって云ったろう」直衛はまじめな顔つきをしてみせた、「ようやく吟味も終ったし、珍しくかな公も、いや、かな公は珍しくはなかったのか」
「かな公はやめて下さい、わたくしそう呼ばれるのがなにより嫌いなんです」
「自分でそう呼べと云ったんだぞ、十一か二のときだったな、男と女と差別はない、ただ違うところは」
「お酒の支度をするように申します」
「そのあとは省略しよう」直衛はにやっと笑った、「そのとき佳奈は、これからあたしのことをかな公と呼んでくれって」