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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

初尾というその妻は山田氏の出で、結婚したのが十七歳の冬、死んだのが十九歳の春で、やはり子には恵まれなかった。

ほぼ月に三度ぐらいの割で、直衛と佳奈の二人は、比野川畔にある料亭「難波」で会い、夕食をともにした。もちろん河本宗兵衛の了解のうえであるが、佳奈は人に見られるとうるさいからと云い、極端なくらい用心していた。

「ばかだね、佳奈らしくもない」と直衛は笑った、「ちゃんと縁談もまとまっているし、私と佳奈とは幼な馴染だ、人に気兼ねをするような理由はなにもないじゃないか」

「との方はそれでいいでしょうけれど、女はそうはまいりません」

「なぜ女はいけないんだ」

「あなたも結婚のご経験があるし、わたくしも良人を持った躯ですもの、こんなふうに二人だけで逢っているところを見られたら、なにをしているのかと思って、どんな疑いをうけるかもしれませんわ」

「ほう、そうですかね」直衛はきまじめに首を捻った。

「結婚の経験のある男女が、二人っきりで食事をしていると、なにをしているのかと疑われますか、そいつは気がつかなかったが、――ぜんたい、どんなことをしていると疑われるんですか」

佳奈はさっと赤くなった。