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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

丁度そのちょっと前頃から絵ハガキが流行しはじめたが、そこでは洋画家のかいた肉筆の絵ハガキも売っていて、ほしくてならなかった。何しろ、勧工場といえば長い道が可なり続いている。そこへ持って行って、ずっと油絵水彩等の洋画がかけてあるのだから、まだ展覧会というものを、そう見る機会のなかった私にとって、この事は非常なうれしい出来事であった。後になってわかったのであるが、これは、桜田本郷町の磯ヶ谷額ぶち店が当時展覧会出品のいろ/\の作家の売れ残り品やあずかり品をただ蔵して置くのも無駄と、ここを借りうけてやっていたものとか、だからそこに出ているものは皆相当の大家の筆であって、事実私ははじめて真の洋画をしみ/″\と見られる機を得たのであった。

日露戦争の最中のこととて、戦争画が多く、コサック騎兵が馬にのって逃げて行く、その中の一人が弾に顔をうたれて手を以て掩い落馬しかけている図などあって、私は幾度もそれを真似て描いたものであった。また出征に行く夫を門口まで送る若き妻が、愛児をだいて父親に別れを告げさせている図の、門内にある新緑の楓が日光にすけている色など実に感服したものであった。