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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

銀ぶら道中記(七)

近来銀座にこういう安値の食物屋が出来、中にはショウウインドーに、料理した食い物を飾ってあるが、あれは、見た眼に、美しくなく少しきたなくみえていけない。食物は膳に置いてこそ美し、窓の中に入れて往来からみせるものにあらず、折角のまぐろの切身も、アリタドラッグの如き感じになってしまう。

銀ぶら道中記(七)

山野楽器店も相当古い。御木本はこちとら貧画生にはあまり用はないが、しかし、世界的に有名な家である。先だって三木本の店員がトンカツをたべてあたって死んだというから、本当かと思ったら、洋食心中だなどと先日かつがれた。

藪そばも古い。三十間堀にいた時分、よくここからそばをとると若い衆が「お待遠、藪でござい」と勇みな声を出して、誂えを置いて行ったものだ。

ちょいとあとへもどって、四丁目の四角をまがってみよう。絵はがきの上方屋は、ここへ移ってから十七、八年にもなろう、いやもっとになるかもしれない。もとは三丁目の通りにあって、廂の上に目の玉の大きな口を開いて、饅頭笠をかぶったその当時の姿をした郵便屋さんが、手に手紙をもって走っている人形が、据えつけてあり、その他トランプの王様や花札などが軒から下っていたものであった。