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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

今は、カフェー・ライオン、八十四銀行、三共のオリザニン、山崎洋服店がこの四角に陣取っている。

カフェー・ライオンはカフェーとして古いものの一つである。カフェーの開祖ともいうべきは先ずカフェー・パウリスタであろう。それまでは、一品レストランでなくば、ミルクホールがその代用をしていた。私はこのパウリスタの出来はじめの貧しいながらもおとくい様であった。お小遣いがあると、弟妹を引きつれて、そこへ陣どり、ドーナッツがいいとか、スネークがいいとか、この砂糖はいくら入れてもいいのだとかいいながら当時には珍しい本物のコーヒーをすすったものだ。当時には珍しいというのは、それまでコーヒーというのは角砂糖の中に入れてある豆のこげたもののことだったからである。多分今から十七年ほど昔になると思われる、これが出来るとじき、プランタンが出来た。プランタンの松山君は、白馬会での私の先輩であった。松山君はあの長いからだと顔とをよく研究所へあらわし、ブラ/\としていたものであったが、物にこだわらず、しゃ/\としている風格は今も昔も変りない。プランタンの出来るときは友人の石川伊十君や岡本帰一君などと手つだいに行ったりしたのを覚えている。