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しんこざいくれんがのみちすじ
新古細句銀座通
岸田 劉生
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页
洋服を著るということは、殊に勤めに出る身には洒落や見得ではなく全くの必要からであることは明白であるが、しかし、日本人で洋服を初めて著る人の誰がそれをちょっと洒落に又見得に、また更にちょっとえらくなったように感じないであろうか。
日本人も、だん/\と洋服を著てパンを食うようになったということに対して、これを淋しく思うものは笑われるであろう。かくして日本は文明開化から更に文化へと進んで行くのである。
明治の半頃、面白い唄がはやった即ち当時のハイカラをうたったものだが。
「牛、ミルクに、ソップにバタ、しゅしゅらしゅんげ(髯の事)の長いナッポレオンだね、そうら三杯酢は、すっぱいものだね、猫とんびにかっぱの屁ったれかっぱ、とって投げほい」というのである。先だって故人になった古今亭今輔が半分本当に酔って、高座でよく酔っぱらいの話をしてこれをうたったものである。
だがこの唄は如何にも無智な感じがするが、明治時代の文明開化という様な感じが実によく出ている、今の洋服を著、パンを食べるパパやママ諸子にこの唄の味はないか、有っても誠に結構である。文化の推移は学者の学説よりも民族の無自覚な本能的な憧憬や要求から生れるからである。