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しんこざいくれんがのみちすじ
新古細句銀座通
岸田 劉生
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页
ところでこの木村屋のすぐ隣にパン屋が出来たについては、何か深い因ねん事があるとか聞いた。が人の口はうるさいし、どっちも商売倶に栄えよかしである。わが国パン食将来の隆盛のためにここに三軒、軒をならべ店を向い合っておのがじしはげむがよろしい。しかし、宝来パンの人ごみに比べ木村屋は昔の盛りを多少奪われた感なきにしもあらずである。が、さすがしにせである、悠々としてあせらない、これは木村屋の名が決して一都市的のものでなく全く全国的のものであって、地方に深い地盤を持つためだろうと或人がいっていた。パンが地方へ出るものか否かは知らぬが、木村屋の落ちつきぶりは決して、ただのものではない、深い自信ある落著ぶりである。
この木村屋の大家さんは三丁目の丸八だとか。丸八のことは三丁目で書くが、木村屋の家賃を昔のまま今日に至るまで一銭も上げないということを聞いたが、さすが江戸時代からの古舗丸八である。こういうことは時勢に適さぬかもしれぬが、こういう時勢に適さぬ人が今日いるということも、一つの現象でまた江戸人の最後の華を飾る美しい存在といわなければならない。
帆かけずしというのはどんなものか食べた事はない。