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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
それは真の闇の地下道の中に、とつぜんおこった花火です。いや、花火の何十倍も大きな焔の花びらです。ほんとうに、その火の柱が天井にあたってくだけているありさまは、一つの大きな百合の花のように見えたことです。
夢に見たこともない美しい景色、そして、それは又、夢に見たこともない恐しい景色でした。
筏は刻一刻その噴火口へ近づいて行きます。近づくにしたがって、ものすごい焔の花は、見る見る大きくなって、三人の目の前は、ただもう白熱の光で一ぱいになってしまいました。
保君と哲雄君は、気絶しないのがやっとでした。ただ筏の材木にしがみついて、うつぶせになったまま、死んだように身動きもしないでいます。
その中で、ただ一人、物を考える力をもっていたのは一郎君です。三人のうちで一番胆力のあるのは一郎君です。
「君たち、しっかりするんだ! まだ助かる見込があるよ。筏を出来るだけ隅の方へ流せば……」
しかし、その声も二人の耳には通じぬのか、なんの返事もありません。
「よし、僕がやって見せるぞ」
一郎君は声をふりしぼって叫ぶと、いきなり筏の上に仁王立になりました。子供ながら、それは見るも恐しい形相でした。