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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「じゃ、僕たちで筏を漕いでみようじゃないか。どっちへ行っていいのかわからないけれど、ともかく漕いでいれば、どこかへ出るよ。じっとしているよりはましだよ」
一郎君が二人を元気づけるようにいいました。
「漕ぐといって、櫂を流してしまったじゃないか。漕ぐものがないよ」
「なくはないさ。ホラさっき僕は箱の蓋で水を掻いたっていったろう。その蓋の板は流してしまったけれど、まだ箱がのこっているよ。あれをこわして、その板で漕げばいいんだ。早くは進まないけれど、一生懸命に漕げば、どっかへ出られるかも知れないじゃないか」
「あ、そうだね。じゃ、やってみようか」
そこで、少年たちは食料のはいっている木箱をこわして、手ごろの二枚の板をつくり、一人ずつ筏の両はじにすわって、その板で水を掻きはじめました。
まっくら闇の中ですから、筏が進んでいるのかどうか、すこしもわかりません。いくら水を掻いても、同じ所にいるような気さえします。なんという心ぼそい仕事でしょう。
でも少年たちは、代りあって、いつまでも根気よく、板の櫂をあやつりました。そうするほかに、この恐しい洞窟をぬけ出す道がないことが、よくわかっていたからです。