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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

「アア、僕たちは運がよかったんだねえ。ボートが少しどちらかへ寄って、ふきつけられたら、こんなひどい断崖だもの、とても助かるみこみはなかったんだよ」

哲雄君がいうとおり、遠浅になった平かな海岸は、三人が流れついた二キロあまりの間だけで、そのほかはズーッと恐しい断崖がつづいているらしいのです。

岩山はそのまま、だんだん高い山になって、ズーッと奥の方までつづいていますので、まわり道をして向側に出るわけにも行きません。むこうへ行こうとすれば、どうしてもそのゴツゴツした、あぶない岩山をよじのぼるほかはないのです。

三人はさいぜんから、あつい日に照らされて、ずいぶん歩きまわったので、すっかりつかれてしまって、のどもかわいていました。

「ねえ、少しやすもうよ。僕はもう一度椰子のつゆが飲みたくなった」

保君がまた弱音をはきました。椰子の林はそのへんまでもつづいていて、海岸から百メートルも森の方へ行けば、おいしい椰子の実がどっさりなっているのです。

一郎君や哲雄君も同じ思いでしたから、すぐ賛成して、岩山のすそづたいに、海岸をあとにして、椰子林の方へ歩いて行きましたが、林の入口にさしかかった時、とつぜん、哲雄君がさけびました。