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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
哲雄君は樽に抱きついて、それが倒れないようにがんばっているのです。
みなさん、おわかりですか。これは物理学の挺子の原理というのです。この棒を長くすればするほど、どんな強い力でも出せるのです。井戸のポンプの柄と同じわけなのです。むかし西洋のある物理学者は、「もし私にそんな大きな棒と、それを支える場所とを造ってくれる人があれば、私は一人の力で、この地球だって動かして見せる」といいましたが、挺子の作用はそれほど恐しい力をつくり出すのです。
哲雄君は実にうまいことを思いつきました。これなら本当に人間の何十倍の力が出せるのです。でも、椰子の油はなかなか思うようにはしぼれません。岩角にはさんである棒の先が飛出したり、樽の上の棒と棒とがはずれたり、樽が横倒しになったりして、何度も何度もやりなおさなければなりませんでした。
しかし、失敗しては工夫をし、又失敗しては工夫をして、三時間ほど、汗びっしょりになって働きましたが、どんな事だって、うまずたゆまずやりつづけていれば、しまいにはなしとげられるものです。三少年のがまんづよい努力はとうとう成功しました。油がとれたのです。