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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
つなぎ烽火
望楼にいた兵が、
「見えるっ、見えるっ。たしかに援軍だっ。金沢表の御人数だ!」
と、下へ絶叫した。
すわ、と満城の声が、わーっと、狂喜の喊声をあげ、足軽頭の上原清兵衛は、大樹のてっぺんによじ登って、
「オオっ。今浜の砂丘に、鍾馗のお馬印が見えるわ! まさしく、金沢表のお味方が参られたぞっ。おおうい! みんなあ! よろこべ、よろこべ。われらの援軍は、今浜まで来ているぞ」
と、両手をふりあげて、満城へどなった弾みに、上原清兵衛は、歓喜のあまり、下の歓呼の声の中へ、木の上から落ちてしまった。
つなぎ烽火
金沢表――尾山城へ、末森城の危急がわかったのは、十日の夜だった。
一番知らせは、富山の商人田畑小兵衛で、佐々成政の軍隊を、加能ざかいの山中に行き迷わせ、三国山の嶮岨から取って返して、金沢までの長途を、脛のつづくかぎり、駈け急いで来たものである。
「たいへんですッ」
と、この一報が城門をたたいて、奥へかくれてから、およそ一刻後。
「一大事でござります」
と、ふたたび、同じ門へ、漁夫のような身なりの男が、末森城危うしと告げて来た。その時もう城門の守りは、戦時態勢になっていた。