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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

信孝は、秀吉の手をとって、

「ここはすでに戦場、主将たる御身が、左様にしておられては、信孝の居りようがない。まずまず床几を取られよ」

と、自身すすめた。

べつの一軍は丹羽隊であった。丹羽長秀はその中にいたが、報らせをうけるとすぐこれへ来て、参会の遅延を謝し、またともにこの一戦に臨む同生共死のよろこびを誓った。そして程なく秀吉の案内で、この軍馬七千も、彼の陣営の一翼となった。

信孝を迎えた河原では、信孝の前にぬかずいた秀吉も、ひとたび自己の陣営に入ると、左右すべて彼に慴伏し、威風払わざるものはなく、たとえ神戸三七信孝たりとも、丹羽五郎左衛門長秀たりとも、全軍の指揮者たるその位置には、自然憚らざるを得なかった。

――といって、秀吉自身が、ことさらに信孝を下におくというようなところはみじんもない。むしろ、宥り慰めて事ごとに気を労うふうすら見える。そして富田の陣営に迎えるとすぐ、

「いまのところ、敵方の情勢はこうなっており、味方はかように進み出ております」

と、手にとるごとく、作戦図について、詳しく説明を与えていた。

きのう中川、高山などの先鋒が進出してから、夜に入って、すでに勝龍寺の西方あたりで、足軽隊同士の鉄砲戦があり、その附近で、探り合いの放火が行われたという報らせは――まず前線部隊からこれへ伝令されていた