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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

橋上橋下

で、諸将は各※(二の字点、1-2-22)、休息する遑もなく、命じられた新戦場へ向うべく、やがて、一斉に座を立ったが、それに対しても秀吉は、将座についたまま、

「大儀大儀」とか、

「いや、御苦労」

とか、極めてあっさりと、顎で会釈を送っているだけだった。

橋上橋下

秀吉もまた同夜のうちに淀まで進んだ。

ここで信孝と宿営を共にし、未明に立って京都へ入った。

六月十四日である。京都では何よりも先に本能寺の焼け跡を訪れて、亡主信長の霊を弔って、戦況を報告した。

――といっても、もちろんここの焼け跡には、燃え残りの伽藍の残骸と灰のほか何物も余されてはいなかった。

ただ一隅の池のほとりに、高台寺かどこかの法師達が来て石を積み重ねておいたという所に、誰とはなく花や水など供えていた跡があったので、仮に、そこを信長以下殉難の将士一同の霊地として、信孝と秀吉は、姿をそろえて、額ずいたのであった。

「ここに立ってもまだ、安土へ参れば、お目にかかれそうな心地がしてならぬ……」

といって信孝は落涙した。

秀吉も、去りがてに佇んで、

「御無念さ、いかばかりでお在したろう。――その六月二日から、ちょうど今日は十三日目、燃え残りの棟木や柱にもまだ火のにおいがするようだ。