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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

これらの者の闘志を、果たして、明智譜代の旗本たちと同様に視て、この戦列に恃んでいられるかどうかも甚だ疑わしいのである。

これに反して、敵秀吉の軍容は、圧倒的な優勢にあるといわなければならない。

数においても。

中国から引っ返した彼の直属軍一万に、池田信輝の四千人、高山、中川の両軍をあわせて四千五百人。ざっと一万八千五百人を擁している。

加うるに、大坂表から参加した神戸信孝、丹羽長秀、蜂屋頼隆の総勢約八千を容れたので、総計すると、

二万六千五百人。

が、その実数となった。明智方から比して、断然一万は多いのである。

のみならず、その麾下は、いわゆる精鋭であり、また故信長の譜代であり、かつ、絶好なる――

「故右大臣家の弔合戦」

なる大旆を持っているのだ。

これに対して、その出足早な潮さきにむかって行くのは、到底、明智方の不利である。

この際、明智方としては、京都という政略上重要な地をひとまず敵に委ねても、坂本まで退いて、そこにある三千の兵と、また味方のうちでも最も恃みがいある良将としている明智左馬介光春をも帷幕に加え、かたがた、四国の政治的変化や、信長の遺臣中にも必然起るであろう内訌と自壊作用などを待って、おもむろに陣容をかため、ここに玉砕を選ぶよりは、万全な戦いをなすべきではあるまいか。