轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

伝五の前には、金色の杵の馬印が、近々と揺れて来るのが見えた。

「さては、神戸三七信孝、自身進まれたな」

と見たので、いまは猶予なく、子息の伝兵衛秀行、舎弟の藤三行久、伊勢与三郎などと共に、一団四百七十騎、

「この首渡すか。あの首を申しうけるか」

と、真ッ黒にかたまって、敢然、数もわからぬ敵の中へ駈け入った。

腥風野を蔽うとはこの一瞬のことであった。宵はすでに暗く、死闘のおめきは、一声一声、血のにおいをふくんで天を翔ける風となった。

羽柴軍の全陣のうちでも、神戸隊は最も兵力の多い点で重厚だったのである。それに丹羽長秀の三千人もそれを救けている。いかに、藤田伝五やその骨肉どもがみな豪勇であっても、到底、刀槍をもって掻き分けられるような薄手な線ではない。

伝五は、全身六ヵ所の傷をうけた。

そしてついには、戦い戦い駈けまわる馬の上で、われ知らず昏々と神気を失いかけていた。

すると、うしろの闇で、

「ち、父上ッ」

と、子の絶叫が聞えた。

息子の伝兵衛秀行の声よと思うと、彼はハッと馬のたてがみから面を上げた。途端である。何やら右眼のうえに打つかったのは。――彼は空の星が額に落ちたように感じた。