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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
08 第八分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页
この日も、照りつづいて、暑さと人いきれに堪えないためもあったろうが、見方によっては、物蔭での個人的な談合はゆるさぬと、暗に制御しているようにも取れる。武者溜りの詰人を始め、要所の杉戸杉戸にいる控人も、悉く柴田の家来といってよいほど多くの外臣が入っていることもただの手助いとは見えなかった。
辰の下刻には、すべてそろい、巳の刻には、総大名衆すべて、大広間に着席していた。
席順から見ると、
柴田、羽柴、丹羽、滝川、と左右両座にわかれて向いあい、以下、池田勝入、細川藤孝、筒井順慶、蒲生氏郷、蜂屋頼隆など居流れていた。もちろん、正面の上座は、一門の神戸三七信孝と、北畠信雄の二人が、席をわかっていたが、なお一方の上襖へ寄って、もうひとりの幼い君が、傅人の長谷川丹波守に抱かれていた。
これが三法師君である。
うしろには、この遺孤の父信忠が二条城で戦死した折、信忠の遺命をうけて、敵中からこれへ遁れ落ちて来たという――遺臣前田玄以がつつましげに控えていた。ひとり生きてこれに在ることは面目ないというような彼の容子を衆目は見ていた。
三法師は、何といっても、まだ三ツなので、傅人の長谷川丹波守が膝へのせて正面へ向けていても、決してじっとしていなかった。