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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
08 第八分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页
「御一緒にまいるつもりで」
と、答え、
「――幸いに、天気も快くして、舟の中での切腹は、さだめし爽やかなことでござろう」
などと、もう同行を独りぎめにしている口吻だった。
宗治は固く断った。
「貴公には、ここの次第をよく見られて、隆景様や元春様へお伝えあれば、それでお役目は、尽されておる。お立場上、誰も卑怯とは云いますまい。――それがしの相伴はむしろ迷惑。おやめ下されたい」
「いや、御報告には、いくらも他に人がある。てまえはどうしても、其許と共に死ぬことに思いきめ申した」
「それはまた、どういうわけです」
「されば。――すでに当城へ臨むときに、もし貴公がいささかの異心でもさしはさみ、敵に通ずるごとき兆あらば、直ちに貴公と刺しちがえる覚悟でござった。しかるに、志もお変えあらず、この城を守り通して、しかも今、主家の安きを祈り、城中一同の命に代って御切腹あるとは、何たるここちよき、御辞世であろう。義に感じててまえも共に自刃いたしたい。それは、隆景様より厳命をうけてこれへ参ったとき、すでに、貴公とは死生一つなり、二度と郷地に帰らんと思うべからずと、独りかたく職分に誓っていたことでござれば、当然な勤めの一つと、笑って、お目に入れず、おゆるしおき下さい」