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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

ここに我々は、お伽噺が神話の沈渣であるという言葉の真実を省みさせられる。当時実際に人心を支配していた仏教は、いかに多く神話的要素を含んでいても、空想の所産としてのお伽噺を産み出しはしなかった。『日本霊異記』の超自然的な物語は、むしろ厳粛な幻視に充たされた宗教的伝説と見るべきものである。しかるに日本古来の、及びシナ伝来の神話的形象は、宗教的観念としての生気を伴なわざるがゆえに、直ちに詩人の空想を刺激してお伽噺の世界を造り出した。この後この空想には仏教芸術の影響が豊富に加わって行くが、しかしいかに仏教的に彩られてもそれは決して神仙譚的な輪郭を失うことがない。『竹取物語』の理解にとっては、この事は看過されてはならぬ。

天平時代における右の興味は、中断さるることなく開展したらしい。一世紀の後、空海の時代もすでに去って藤原氏専権時代がまさに始まろうとしたころに(嘉祥二年、続日本後紀、巻十九)、興福寺の法師が仁明天皇の宝算四十を賀した種々の催しをやった。そのうちで、仏教的ならぬものは、ただ「浦島子暫昇二雲漢一、而得二長生一、吉野女眇通二上天一而来且去等像」[浦島の子が暫く雲漢に昇り、而して長生を得しこと、吉野の女が眇かに上天に通り、而して来りて且つ去ること等の像]を作ったことのみであった。