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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

「世界の男、貴なるも賤しきも」、かぐや姫を手に入れようとして騒ぎ始める。

この不可思議な出現に対して、作中の何人も怪しみいぶかるということがない。三寸ほどの人間を見いだした翁も、三月の間に大人にまで成長するのを見まもっている嫗も、皆それを当然のことのように迎えている。そうして読者もこの作の世界にこの事の起こるのを不思議とは思わない。これが『竹取物語』の、最初の一段において作り出すところの世界である。

次いで五人の貴公子の求婚とかぐや姫の条件提出の段がある。ここで描写は写実的になるが、しかし作の世界は依然として超自然的である。第一には、皇子あるいは大臣というごとき人々が、まだ見もせぬかぐや姫に対して、「物も食はず思ふ」というほどに恋着する。祈祷をし願を立ててこの思いを止めようとするが、止まらない。第二には、最近まで貧しい平民であった翁の前に、皇子や大臣が「娘を我にたべと伏し拝み手を摩り」て頼む。平安朝の社会を知るものにとっては、これらのことがいかに非現実的であるかは明らかであろう。しかもそれはこの作の世界において当然である。いかなる高貴の人もかぐや姫には死ぬほど恋着しなくてはならぬ。