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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

しかしもしこの物語からある部分を抽き出して鑑賞するならば、すなわちこの物語のうちに或る短篇を読むならば、事情は変化する。描写の不十分も、繰り返しから切り放たれた時には、著しくその罪を減ずる。が、この場合に我々は、『源氏物語』全篇のうちに、描写の比較的巧妙な巻とまた著しく拙劣な巻とが混在することを注意しなくてはならぬ。

森鴎外氏は、『源氏物語』の文章がある抵抗に打ち勝たずしては理解せられないものであることを説き、「源氏物語は悪文だ」と言った松波資之氏の語をあげている(鴎外全集、一九、四三八ページ)。鴎外氏はこの語が必ずしも『源氏物語』を謗ったのではないことを言っているが、とにかく古来の学者の内にこの物語を悪文だと言った人があることを知るのは自分にとって心強い。確かに『源氏』の文章の晦渋は、作者の責任であって、我々が語学の力の不足のゆえにのみ感ずるのではない。このことは『枕草紙』との比較によっても明らかである。自分はこの晦渋の原因の重大な一つを描写の視点の混乱に認め得ると思う。たとえば「橋姫」のごときは、この混乱のために、不快な抵抗を感ぜずには読むことができない。