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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
(これによって見ると、一日の労働は塩三升に、あるいはあらめ二十六斤に、あるいは絹八寸五分に当たるのである。)
これらの観察よりすれば、法令によって保証せられた一般民衆の生活は、普通に勤勉でありさえすれば、かなり豊かなものである。そうして恐らく彼らの労働能力の全部を費やさなくてもすむものである。(なおより以上に働くことを欲するものは、口分田以外に公田あるいは貴族の私田を小作することができ、また実際小作した。)この一般民衆の生活程度は、恐らく現在の中流階級に匹敵するであろう。ただしかし、天災に対する抵抗力の弱い当時の農耕は、民衆の生活にしばしば不時の変調を起こさせた。気候激変、長雨、洪水、暴風、旱魃、虫害、それらのあるたびごとに饑饉が起こる。それがこの時代の民衆の生活に暗い影を投げた最大の原因である。しかしこれは、制度の罪ではない。制度によって醸される害悪をでき得る限り取り除いたあとにも、なお右のごとき害悪は頻々として起こり得る。そうしてそれは土地分配の割り前を高めることによって救われるものではない。政治家の取るべき救済の方法としては、租税の免除、食糧の賑給、物資の廉売、平時の貯蓄、及び宗教的に絶対者にすがること等があるが、当時の政治家はこれらのすべてを行なったのである。