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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

しかしもし孝が捨離し難い特殊の力を持つとすれば、それは孝が徳であるゆえではなくして愛情であるゆえでなくてはならない。この愛情は在家にとっては美しい。しかし出家にとっては障礙である。

ある僧が道元に問うて言った――自分には老母があって、ひとり子である自分に扶持せられている。母子の間の情愛もきわめて深い。だから自分は己れを枉げて母の衣糧をかせいでいる。もし自分が遁世籠居すれば母は一日も活きて行けないであろう。が、そのために自分は仏道に専心することができない。自分はどうすればいいのか。母を捨てて道に入るべきであるのか。道元は答えていう――それは難事である。他人のはからうべき事でない。自らよくよく思惟して、まことに仏道の志があるならば、どんな方法でもめぐらして母儀を安堵させ、仏道に入るがよい。要求強きところには必ず方法が見いだされる。母儀の死ぬのを待って仏道に入ればすべてが円く行くように思えるが、しかしもし自分が先に死ねばどうなるか。老母は真理への努力を妨げたことになる。これに反して「もし今生を捨てて仏道に入りたらば、老母はたとひ餓死すとも、一子をゆるして道に入らしめたる功徳、豈得道の良縁にあらざらんや」