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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
この「作者の企画の専制」は全篇を通じて著しい。政右衛門の「危うき場所」を救った幸兵衛は、実は政右衛門の師匠であり、そうしてこの師匠の娘お袖は実は政右衛門の敵河合股五郎の許嫁である。作者はこの珍しき因縁の錯綜をもって看者の心を捕えんとし、まず十余年ぶりの師弟の再会をきわめて「柔らかく感動的」な場面で描いたのちに、この満足の感情を破るものとして、敵持つ政右衛門の自己韜晦や、師匠が実は敵の内縁者であることの現わしを、立てつづけに描いて行く。かくして政右衛門は、昔の幸兵衛の弟子庄太郎として、河合股五郎の敵のうちの最も恐るべき唐木政右衛門に、すなわち自分自身に、対抗すべく懇願されるのである。この師恩と敵討ちとの二つの義理の対立は、政右衛門の性格には何の関するところもなく、ただ単に運命――しかもきわめてまれなる偶然によって、導き出された。しかも驚くべきことには、この不思議な因縁の錯綜を見いだした主人公が、その心に何の驚異をも感じない。十年ぶりの再会をあれほど強く感じ得る心をもって、どうしてこの「師匠を敵たらしめた」運命の悪戯に感動せずにいられたろう。このような奇異なる偶然があたかも家常茶飯事のごとく取り扱われるこの戯曲の世界は、我々にとって実に不可解である。