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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
ここに役者の「芸」が主位を占めるところの歌舞伎劇の他の方面がある。そうして歌舞伎劇の美はまさにこの方面に存するのである。従ってこの美は戯曲的要素の少ないものにおいてほど一層純粋に現われる。『暫』とか『狐忠信』とか『車引』とかのごとく、絵画的舞踊的効果のために写実的な要求や戯曲の制約を全然放擲して顧みないもの、あるいはさらに『関兵衛』、『田舎源氏』、『鷺娘』などのごとく、純粋に舞踊であるもの、――それらにこの芸術の最もよき代表者がある(注一)。我々はここに徳川時代の特殊な情調より生まれた特殊な美を、――その意味で世界に比類がなく、また絶対に「再びすべからざるもの」であるところの独特な美を、見いだすのである。もとよりそれは我々の現在の心を余蘊なく充たし得るものではなかろう。我々の心は自由にして奔放なロシア舞踊により深く満足するに相違ない(注二)。しかしたとえばあの鷺娘が、真白き装いをして、薄い傘をさして、「しょんぼりとかあいらしく」たたずんだあの不思議に艶な姿は、いかなるロシア舞踊の傑作にも見られない特殊な美しさを印象しはしないか。そうしてあの頸の、静かな、柔らかな、そうしてきわめてわずかなうねり方は、ロシア舞踊に満足すると全然異なった方向において、我々の心に鋭い顫動を呼び起こしはしないか。