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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

そうしてこの「自然児の悲しみ」のうちに我々は、右に言うごとき憧憬の力強く動いていたことを推測し得るのである。試みに我々が幼いころ天真な自然児として感じた悲哀を追想してみるがよい。たといそれが親しい者の死というごとき重大な瞬間でない場合でも、たとえば夕暮れ、遊び疲れてとぼとぼと家路をたどる時などに、心の底まで滲み入ってくるあの透明な悲哀。そこには超地上的世界の観念が存しないにかかわらず、なお無限なるもの、永遠なるもの、完全なるものへの憧憬がある。この強い予感としての悲哀こそは、自然児の心に開かれたる大いなる可能性である。

この自然人の心にとっては、宗教はまことに欠くべからざるものであった。彼らはその頼りなさのささえを要する。あたかも幼いものがすべてを委せて母に頼るように、そうしてその悲しみをも苦しみをもまた心細さをも心の限りに泣き訴えることによって慰めを得るように。自然人はこの頼るべき力を木や石に、あるいは正確に言えば彼らがこの崇拝の対象に対して行なうところの彼ら自身の儀礼のうちに、見いだした。かくてたとえば「祓い」というごとき儀礼が彼らを守る魔力を持つと信ぜられた。