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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
これこそまさにあの肉の軟らかい、鼻軟骨の固まらない、嬰児の鼻なのである。また唇について言えば、微妙な表情を含んだ夢殿や中宮寺の観音の唇が、無心の嬰児のそれでないことは言うまでもなく、また表情を含まない唇でも、推古式彫像においては多く輪郭の端正さを欠いている。しかるに白鳳天平の仏菩薩像の唇は、無心にして何の表情をも含まないとともに、実に明らかな、端正な輪郭を印象するのである。そうしてそれは目の曲線におけると同じく、一般人に通有な輪郭でありながら、ただその新鮮な明白さのゆえに嬰児において特に強く、特に清浄端正に感ぜられるところのものなのである。
頬の肉づけにおいては我々は目におけると同じき著しい特徴を見る。推古の三傑作の頬は、明らかに意味ある表情をふくんた、そうして肉のしまった、成長した人の頬である。が、白鳳天平の諸像においては、この種の表情は全然現われておらず、またそのふくらみも、成長した人の頬としては実に空虚であるが嬰児の柔らかい頬としては十分に我々を承服せしめるところの円さである。そうしてこの円い頬と目鼻口などとの美しい釣り合いも、――すなわちたとえば法隆寺壁画の西方阿弥陀仏の面相におけるごとく、顔面の周囲に比較的多く余地のあるあの寛やかな朗らかな調和の感じも、――面長な推古仏には見られず、また円く肥え