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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
あの鋭い屋根の彎曲は、百済観音の線と同じく胸を打つような美しい走り方をしているとともにまたきわめて抽象的である。しかるに天平建築に至ると、たとえば唐招提寺金堂のように、屋根のあらゆる彎曲が厳密に構造の必然性に服従するごとく感ぜられる。柱の多いことはささえる力の増大を意味するゆえに、中央の柱間が広く、左右に至るに従って漸減する柱の配置は、支力が左右の端に向かって漸増することを意味するが、この支力の疎密と屋根の重圧力をささえて下からはね返す軒の曲線とは、きわめて微妙に釣り合って感ぜられる。自分は厳密な計算によって屋根の曲率と柱の配置との間に或る数学的関係が見いだせるか否かを知らないが、もしギリシア建築に幾何学的な関係が見いだせるとすれば、ここに見いだせるものは恐らく微積分によって現わし得らるる関係であろう。もしこの感じがあやまっていないとすれば、天平建築には彫刻の写実的特徴と相応じて構造の必然性に従う合理的な傾向があり、推古建築には彫刻の抽象的特徴に応じて構造の必然性を無視する非合理的傾向があると言えるであろう。そうしてこの根拠から推古建築の神秘的な印象と、天平建築の朗らかにして調和的な従って直観の喜びに豊かな印象とを、説明し得るであろう。