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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

ますらをは友のさわぎになぐさもる心もあらむ我ぞ苦しき  (巻十一)

のごとき、写実の妙をきわめたものもある。

これらは目にふるるままに不用意に引用した例であるが、その純粋、熱烈な音調と言い、緊張した心持ちと言い、直視の鋭さと言い、写実の妙と言い、これをギリシア盛時の叙情詩に比するも決して遜色はあるまいと思う。そうしてこれらの叙情詩の特性は、白鳳時代の偉大なる造形美術の特性と、実によく相覆うのである。薬師寺聖観音、法隆寺壁画のごとく、西域伝来の様式を示す以外にほとんど日本人の痕跡の認められないとせられている傑作にも、自分は当時の叙情詩の示すと同じき気品や緊張や感情のうねりを感じ得ると思う。

天平時代に至っては、昇り切ろうとする心のあの強烈な緊張はもう見られない。しかしその前半においては、いかにも絶頂らしい感情の満潮、豊満な落ちつきと欠くるところのない調和とが見られる。そうしてこのことを当時の短歌がまた証拠立てるのである。その満潮がようやく引き始める時期をここに正確に指定することはできないが、弛緩の傾向はすでに天平の前半から始まり、後半に至っていよいよ著しくなったと見てよかろう。