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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

五

技巧は単なる玩弄物として終わろうとする。この傾向のさらにはなはだしいものは、一定の言葉を詠み込む歌である。たとえば、

香塗れる塔になよりそ川隅の屎鮒はめるいたき女奴  (巻十六)

のごとく「香、塔、厠、屎、鮒、奴」等結びつき難き六語を巧みに結びつけて意味ある一つの歌を作ったことが、当時のある人々には喜びであった。

この傾向もまた天平後期の彫刻に見られるところである。技巧が堅実であるにかかわらず生命の空虚の感ぜられる多くの作品は、右のごとく芸術家的な心持ちの弛緩した人の所産であろう。天平後期の歌は戯れ歌でないまでも一体にこの種の弛緩があった。

なでしこが花見る如に乙女等がゑまひのにほひ思ほゆるかも  (家持)

のごときはその適例である。なおまた、

この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我はなりなむ  (旅人)

というごとき心持ちが天平後期の一つの特徴であって、仏教界にもこの種の頽廃気分が起こり、彫刻において単に肉感的であることを目ざすらしい傾向の現われ始めたことなども、注意する必要はあると思う。

五

はなはだ大ざっぱではあるが、右のごとく見れば仏教美術と『万葉』