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にっき
日記
宮本 百合子
20 一九三六年(昭和十一年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,424 字 · 32 页
四月二十二日
〔受信〕重治。
○鈴子、あさ子、栄、あさの、国。
クライストの「O侯爵夫人」。
〔欄外に〕
○眼鏡の処方を書いて貰う。
○「アルト・ハイデルベルク」木村謹治、をよむ。カール・ハインリッヒの描写が心に暖くふれた。「ジャックリーヌと日本人」の中で日本人の云う、これが「アルト・ハイデルベルク」であった。甘いものをなかなか単純に甘くなく、ある若々しさ、素直さ、苦痛(カールの)など。カールの言葉の或点(性格の或ニュアンス)自分は宮の或面を思い出しつつ読んだ。
四月二十二日(水曜)
○ケンプのピアノをききにゆく。久しぶりで(一年以上)人にあたった。ロク郎、キス、服部正。(かえりジャーマンベーカリー。)
ケンプのプログラムは、バッハ、モツァルト、ヴェトウヴェン。モツァルトが耳にのこる。ヴェトウヴェンの素朴さをケンプはもっていない。このひとのピアニシモは自分に様々の疑問を与える。非常に注意をひかれ、直感的に疑問を感じるが、自分の音楽を理解する能力では未だ十分の説明つかず。テクニックの上でベースのフォルテでペタルをきかせながら、右手のアルペジオなど、ちっとも音をまぜず、左手の音響の上を珠走らす如く弾く美しさなど、実に驚くべき美しさである。