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にっき

日記

宮本 百合子

20 一九三六年(昭和十一年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,424 字 · 32 页

青空文庫

四月二十四日

〔欄外に〕

○クライストという人の作品は(ロマンチシズムは)自分にぴったりせず。

「聖ドミンゴ島の婚約」など。自分はメリメの「タマンゴ」を思い出し、「タマンゴ」に親しみを感じる。クライストは色でいうと黒地に金糸の厚肉刺繍であり、現在の自分、その趣味なし。

四月二十四日(金曜)

○十一時すぎにスエをつれて外苑のいつもの円いところへゆきブラブラ歩こうとゆきかけると、右手のベンチに猪垣が和服を着て腰かけている。「早すぎると思ったから」自分、何だか待っていたお客を公園のベンチで発見したことが可笑しくて大笑いした。

○クニ、二階への御見舞として来てよって、少し荷物をもってゆく。「姉さんがすこし派手に出すぎたところがあると思う」とか何とか。うまくやってゆく方が利口だ云々、今は収出つぐなうようにして行くことほか何にも心配していない云々。「そういうひとも必要だということは分るが」云々

◎生活感情の中に共通な或感情、情熱を持たぬ男(K) 持つ男(父)

〔欄外に〕

○外苑の楓、八分どおり新緑、美しい。

○夜八時すぎ。湯上り。うすぎ。室の中ややさむい。クリーム色のブラインドを巻き下そうとして、窓に向い上を見たら、素通しのガラス(上半分)の暗い空の前に満開の八重桜の枝が白く重く見えた。