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しゅんせつのでわじのみっか

春雪の出羽路の三日

喜田 貞吉

「社会史研究 第九巻第六号」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,521 字 · 33 页

青空文庫

タヤとラク

二十八日の夜は深沢君および三浦君とともにこの江畑君の御宅で御厄介になった。近所の石名館から発掘したという石器、土器など取り寄せて見せてくださった。土器はもちろんアイヌ式のもので、石器は多くは奥羽地方の普通品だが、ただ一つ、糸ナデと称する麻の皮剥きに似た石器は珍らしかった。何分にも仙北地方だ。アイヌの遺蹟は多いらしい。

タヤとラク

江畑君方の一夜は、有益なる雑談に夜の更けるも知らずに過ごしたことであった。そのうち特に面白いと感じたのは、この地方で小作百姓をタヤというとのことである。タヤはもちろん田屋の義であろう。他の地方では一般に婦人の月経のことを「タヤ」といい、月経時のことを「タヤにいる」などという。タヤについては『民族と歴史』第四巻第四号に、橋川正君の「タヤ考」を紹介しておいたが、あれは主として本願寺のタヤについてであった。月経をタヤと呼ぶことは、もともとわが邦俗血穢を忌んで、経時の婦女の住宅内に同居し、特に神棚に近づくことを許さぬ習慣から、漁村では通例海岸に月小屋を設けて、経時の婦女はその期間をここに過ごすの例であったように、農村では有り合せの田屋に経時を送ったことから、得た名であるに相違ない。