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しょうわよねんのぶんだんのがいかん

昭和四年の文壇の概観

平林 初之輔

「新潮 第二六年第一二号」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 页

青空文庫

五 探偵小説の台頭

価値転倒の文学である。日本のナンセンス文学が、地口と洒落との範囲をでないで、スピリチュアルな要素を欠いているのは、したがって、ナンセンス文学の本質的なものを欠いているということになる。

五 探偵小説の台頭

今日全世界で、最も広く読まれている文学は、探偵小説であろう。特に英米二大資本主義国における大衆読み物のうちでだんぜん地をぬいているものは探偵小説である。

日本でも、今年は、探偵小説が急に台頭してきた。従来ほとんど、『新青年』の独占であった探偵小説が、今年は、一方では、『キング』、『講談倶楽部』、『朝日』、『婦女界』等の大衆雑誌や婦人雑誌に掲載されはじめ、他方では『中央公論』、『改造』、『文学時代』等の従来純文芸小説ばかりを掲載していた高級雑誌に進出し、『東京朝日新聞』は、甲賀三郎の「幽霊犯人」を講談にかえて夕刊紙上に連載するようになり、時期を同じうして、四つの書店から、創作および翻訳の探偵小説全集が出版されるという有り様であった。

だが、これらの賑やかな外観の割合には、探偵小説の実質的な発達はそれほど目ざましいものではなかった。その理由は、まず第一に、日本の読者層が、まだ探偵小説を歓迎する程までには発達していないためであり、第二には、がんらい日本人は古くから、探偵小説の発達に好適な推理的国民ではないため