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ばんしゅう
晩秋
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1945(昭和20)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,792 字 · 23 页
「然し、然し、果してこれが過誤だったでしょうか」
「苛斂誅求は政治の最悪なるものだ、その一つだけでも責任の価はきわめて大きい、これだけでも進藤主計の罪は死に当るだろう、そしてこれは、……これは初めから覚悟していたことなのだ、今日あることは……」
そこで言葉が切れた、少しまえから風が出たとみえ、庭の櫟林がひょうひょうと枝を鳴らしている、それは夜の暗さとはげしい寒気を思わせ、聞く者の膚を粟立たせるような響きをもっていた。
「ただ残念なことは」と、暫くして主計が続けた、「……家中から幾人か犠牲者を出したことだ、やむを得ないことだったが、中には惜しい者、互いに心をうちあけてみたい者も少なくなかった。これは老人の愚痴になるけれども、そういう者と心から語ることもできず、黙って死んで貰わなければならないという気持は、この気持だけはかなり堪えがたいものだったよ」
おそらく鈴木主馬であろう、声を殺して咽びあげるのが聞えてきた。……それからさらにどのような会話が交わされたか、都留にはもう聞くことはできなかった。主計の言葉からうけた感動は余りに大きく、その委細を理解するよりもまずうちのめされた。