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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

借りたインバネス

ポット出の学生なぞはよくやられる。

借りたインバネス

大勢連れで露店を掻きまわしたり、飲食店の皿数を胡麻化したりするのは、東京に限らぬ学生たちのわるさである。

隣席の客の下足札をすり換えて穿いて行く。あとでお客が面喰らうのを見ているとなかなか面白いという。面白いかも知れぬが立派な泥棒行為である。

一人の青年が、田舎者と公園で知り合いになって、一緒に飲食店に這入った。煙草を買いに行こうとすると、生憎雨が降り出したので、一寸のつもりで田舎者のインバネスを借りて出て行った。

「貸さない」

とは云えないまま貸したものの、田舎者は心配になった。急いで金を払って、雨の中を青年の行った方へ行くと、二人の友達と四辻で話をしている。その中に電車が傍を通ると、三人共飛び乗って行った。

田舎者は驚いた。

近所の交番に駈込んで、電車の番号とその青年の風采を告げた。交通巡査が直に赤いオートバイを飛ばして、その電車を押えて、青年と友達を引っぱって来た。

青年は三人共某大学生と名乗って、しきりに田舎者にあやまったが、田舎者は承知しなかった。三人は警察へ連れて行かれた。

一時は真黒な人だかりであった。