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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

家を飛び出したい

科学が何やら、生命がどんなものやら知らないままにそう信じている。

まだある。

家を飛び出したい

現代の少年少女がその親達から聴くお説教は、大抵、生活難にいじけた倫理道徳である。物質本位の利害得失論を組み合わせた、砂を噛むような処世法である。殊に震災後の強烈な生存競争に疲れ切った親達は、もうそんな理窟を編み出す力さえ無くなったらしい、大昔から何の効能もないときまった、「恩の押し売り」を試みる位が関の山らしい。あとは学校の先生に任せて、「どうぞよろしく」という式が殖えて来たらしい。

単純な少年少女の頭は、そんな親たちの云う通りになったら、坊主にでもなった気で味気ない一生を送らねばならぬようにしか思われぬ。親のために生れたので、自分のために生れたのではないようにしか思われぬ。とてもやり切れたものでない。「おやじ教育」なぞいう言葉が痛快がられるのは、このような社会心理からと思われる。

少年少女は、だから一日も早く、こんな家庭から逃げ出そうとする。何でも早く家を出よう、独立して生活しよう、そうして享楽しよう……なぞと思うのは上等の方であろう。

こうした気持ちは東京の子女ばかりではない。