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とうきょうじんのだらくじだい
東京人の堕落時代
杉山 萠円
「九州日報」1925(大正14)年1~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页
その向うに四十代と二十代と二人の好男子が、リュウとした背広を着て、腰をかけて見張っていた。お客はあまりないようであった。
通りかかりの人が大勢、冷たい硝子窓に額や頬を押つけて、そのカチャンカチャンを飽かずに見ていた。
まだこのほかにも丸ビルには、彼女たちと似たようなお化粧ぶりの女がいくらもいた。
否、ここばかりでない。有名な駅の切符売場、郵便局の窓にも、問題の女がチョイチョイ居るのを見た。
銀座の或る菓子屋には、欧州風の部屋着の揃いに、揃いの頭、揃いの髪飾りの美少女が五人、輪を作って椅子に腰をかけていた。只それだけの役目らしく、お客が来ると男の店員が代って応対をした。
神田の某文具店の女店員は、鉛筆部、ノート部、帳簿部、万年筆部といった風に受け持ちがあって、勘定一切の責任を負うている。仕事は親切で態度も慎ましやかである。しかもそれが化粧は揃いも揃って夜の光線向きで、一見怪しい女だと思わせられた。
某大百貨店と某大呉服店の女店員(茶酌み女も含む)が平均十円程度の売り物である事は、上流の貴婦人にもかなり知られているらしい。
これに対抗して銀座の或る大ビルの事務所では、事務員に東京生れの醜婦ばかりを集めているとこの頃聴いた。